はるの看護おべんきょう帖

看護師として勤務していた頃に学んだことや、勉強ノートにまとめていた内容を振り返りながら、看護・医療に関する知識を整理していきます。

今回は、脊椎手術後に注意したい合併症についてまとめました。

脊椎手術後は、神経の圧迫や創部の感染、硬膜損傷による髄液漏などが起こることがあります。

術後の患者さんを観察する際には、疼痛や麻痺の変化、創部の状態、ドレーンの排液などを確認し、異常の早期発見につなげることが重要です。

この記事では、脊椎手術後の主な合併症として、次の3つについて解説します。

  • 硬膜外血腫
  • 創部感染症
  • 硬膜損傷・髄液漏

1.硬膜外血腫

硬膜外血腫とは

硬膜外血腫とは、硬膜の外側に血液が貯留した状態です。

脊椎手術後に出血が起こり、血液が十分に排出されずに貯留すると、脊髄や神経根、馬尾などを圧迫することがあります。

神経組織が圧迫されると、疼痛やしびれ、筋力低下、麻痺などの神経症状が出現する可能性があります。

術後硬膜外血腫は、神経機能に重大な影響を及ぼすことがあるため、早期発見と迅速な対応が重要です。

硬膜外血腫が形成される仕組み

手術後は、手術部位から出血することがあります。

ドレーンが留置されている場合は、血液などを体外へ排出します。しかし、出血が続いたり、ドレーンの閉塞などによって排液が滞ったりすると、手術部位に血液が貯留することがあります。

ドレーン抜去後に出血が起こる場合もあるため、ドレーンが留置されている間だけでなく、抜去後も患者さんの状態を観察することが大切です。

なお、ドレーンが留置されていても、硬膜外血腫の発生を完全に防げるわけではありません。

硬膜外血腫の症状

硬膜外血腫によって神経が圧迫されると、次のような症状が現れることがあります。

  • 急激な疼痛の出現や増強
  • しびれの出現や増悪
  • 筋力低下
  • 新たな麻痺
  • 排尿・排便機能の変化

特に注意したいのは、術前にはなかった神経症状が出現した場合や、術前からの症状が増悪した場合です。

また、疼痛の変化だけで血腫の有無を判断することはできません。痛みが軽くなった場合でも、筋力や感覚などの神経所見を合わせて確認する必要があります。

硬膜外血腫の発生時期と危険因子

術後硬膜外血腫による症状は、術後24~48時間以内に現れることが多いとされています。ただし、術直後に発症する場合や、時間が経過してから発症する場合もあります。

主な危険因子としては、次のようなものが挙げられます。

  • 広範囲に及ぶ手術や複数椎間の手術
  • 血液凝固異常
  • 抗血栓薬の使用歴や周術期の薬剤管理に関する要因
  • 再手術などの手術歴
  • 周術期の血圧管理に関する要因

危険因子があるからといって必ず血腫が形成されるわけではありません。また、危険因子がなくても発症する可能性があります。

看護師が注意したい観察ポイント

術前・術後の神経症状を比較する

脊椎疾患の患者さんは、手術前からしびれや筋力低下、麻痺などがみられることがあります。

そのため、術前からの神経症状を把握し、術後の状態と比較できるようにしておくことが重要です。

観察項目の例は次のとおりです。

  • 上下肢の筋力や動かしやすさ
  • しびれや感覚障害の有無と程度
  • 疼痛の部位や強さ、変化
  • 排尿・排便機能の変化

頸椎・胸椎の手術後は、脊髄の圧迫による四肢の筋力低下や感覚障害などに注意します。

腰椎の手術後は、神経根や馬尾の圧迫による下肢の疼痛、しびれ、筋力低下、排尿・排便機能の変化などに注意が必要です。

ドレーンの排液状態を確認する

ドレーンが留置されている場合は、排液量や性状、色調、チューブの状態などを確認します。

  • 排液量や色調の変化
  • チューブの屈曲や閉塞の有無
  • 吸引圧が指示どおりに保たれているか
  • ガーゼへの出血の有無や量
  • 創部の腫脹の有無

ドレーンの排液量が急激に減少し、創部のガーゼにも出血がみられない場合でも、必ずしも出血が止まったとは限りません。

疼痛や麻痺の出現、術前からの症状の増悪などを伴う場合には、血腫形成や排液不良などを疑い、速やかに医師へ報告する必要があります。

ドレーンのミルキングや吸引圧の調整は、ドレーンの種類や施設の手順、医師の指示に従って行います。

頸椎前方手術後は呼吸状態にも注意する

頸椎前方手術後は、頸部の血腫によって気道が圧迫され、呼吸障害を起こす危険性があります。

頸部の腫脹や膨隆、呼吸数、呼吸状態、嗄声、嚥下の変化などを注意深く観察します。

頸部の腫脹が急速に進行する場合や、呼吸困難が出現した場合は、気道閉塞につながる可能性があるため、速やかな報告と緊急対応が必要です。

硬膜外血腫が疑われる場合の対応

新たな麻痺や筋力低下が出現した場合、神経症状が進行している場合などは、硬膜外血腫を含む重篤な合併症を疑います。

神経症状が進行している場合には、緊急の画像検査や血腫除去術などが必要になることがあります。

神経症状の出現から治療までの時間は、神経機能の回復に関係する重要な要素です。異常が疑われる場合は、経過観察だけで対応せず、速やかに医師へ報告することが大切です。

2.創部感染症

創部感染症とは

創部感染症とは、手術によって生じた創部や手術部位に細菌などが侵入し、感染を起こした状態です。

脊椎手術後の感染は、皮膚や皮下組織などの浅い部分に生じる場合もあれば、筋肉や骨、インプラント周囲などの深部に生じる場合もあります。

深部感染では、創部の見た目に明らかな異常がなくても感染が進行していることがあるため、注意が必要です。

創部感染症の危険因子

創部感染症の危険因子には、患者さんの全身状態に関するものと、手術に関するものがあります。

主な危険因子は次のとおりです。

  • 血糖コントロール不良
  • 免疫抑制状態
  • ステロイド薬や免疫抑制薬の使用
  • 放射線治療歴
  • 長期間の透析
  • 既存の感染症
  • 低栄養
  • 喫煙
  • 肥満
  • 高齢
  • 手術範囲が広い場合や手術時間が長い場合
  • 再手術やインプラントを使用する手術

これらの要因は、感染のリスクや創傷治癒に影響することがあります。

例えば、喫煙は血流や組織への酸素供給、創傷治癒に悪影響を及ぼす可能性があります。また、血糖コントロール不良も感染リスクに関係します。

創部感染症の症状

創部感染症では、次のような症状や変化がみられることがあります。

  • 発熱や、いったん落ち着いた体温の再上昇
  • 炎症反応の上昇
  • 創部の発赤
  • 腫脹
  • 熱感
  • 疼痛の増強
  • 浸出液や膿性排液
  • 創部離開

ただし、これらの症状がすべて出現するとは限りません。

特に、術後の疼痛がいったん落ち着いたあとに再び強くなった場合などは、創部感染症を含む合併症に注意が必要です。

発熱だけで感染症と判断することはできませんが、体温の推移や創部の状態、採血データなどを合わせて確認します。

インプラント手術後の感染に注意する

脊椎手術では、脊柱を固定するためにスクリューやロッドなどのインプラントを使用することがあります。

インプラント周囲に感染が生じると、細菌が表面に付着してバイオフィルムを形成することなどにより、感染の診断や治療が難しくなる場合があります。

また、感染が長引くと、骨癒合不全や偽関節、インプラントの緩み、疼痛の持続などにつながる可能性があります。

インプラントを抜去するかどうかは、感染の時期や程度、インプラントの安定性、骨癒合の状態などを踏まえて判断されます。

術後早期の感染では、脊柱の安定性を保つためにインプラントを温存しながら、洗浄やデブリードマン、抗菌薬治療などを行う場合があります。

一方、インプラントを温存できるかどうかは症例によって異なり、すべての感染で温存できるわけではありません。

看護師が注意したい観察ポイント

創部の状態

  • 発赤の有無
  • 腫脹や熱感の有無
  • 疼痛の程度や変化
  • 浸出液の有無、性状、色、量、におい
  • 創部離開の有無

創部の状態を観察するときは、前回の観察結果と比較し、変化がないか確認することが大切です。

ドレーンの排液

ドレーンが留置されている場合は、排液量や性状、色調、においなどを確認します。

排液の変化は、創部の状態を把握するための重要な情報です。異常が疑われる場合は、速やかに報告します。

採血データ・全身状態

  • 体温の推移
  • 白血球数
  • CRPなどの炎症反応
  • 全身倦怠感などの全身症状
  • 疼痛の変化

採血データは、単独の数値だけで判断するのではなく、術後の経過や患者さんの症状と合わせて評価します。

創部感染症が疑われる場合の対応

創部感染症が疑われる場合は、創部の状態や全身症状を確認し、医師へ報告します。

必要に応じて、採血や画像検査、培養検査などによって感染の有無や範囲を評価します。

治療では、感染の程度や原因に応じて抗菌薬治療や外科的な洗浄・デブリードマンなどが検討されます。

インプラントが使用されている場合は、脊柱の安定性や骨癒合の状態も考慮しながら治療方針が決定されます。

3.硬膜損傷・髄液漏

硬膜損傷とは

硬膜は、脳や脊髄を包んで保護している膜です。

脊椎手術では、手術操作によって硬膜が損傷することがあります。硬膜が損傷すると、その部位から脳脊髄液が漏れ出すことがあり、この状態を髄液漏といいます。

術中に硬膜損傷が確認された場合は、縫合などによる修復や、必要に応じて補助材料を用いた処置が行われます。

しかし、修復後も髄液が漏れ続けたり、硬膜外や創外、皮下に髄液が貯留したりすることがあります。

髄液漏が続くと、頭蓋内圧の低下に伴う症状や、髄膜炎などの合併症につながる可能性があるため、注意が必要です。

髄液漏を疑うサイン

髄液漏が疑われる場合には、次のような変化がみられることがあります。

  • ドレーン排液量が多い
  • 排液が透明から淡黄色の漿液性である
  • 創部から透明な液体が漏れている
  • 起き上がったときに頭痛が強くなる
  • めまいや悪心などの症状が出現する

ただし、排液が漿液性であることや排液量が多いことだけで、髄液漏と確定することはできません。

排液の性状や量、患者さんの症状、手術内容などを合わせて評価し、疑わしい場合は医師へ報告します。

低髄液圧に伴う症状

髄液が漏れることで髄液圧が低下すると、次のような症状が現れることがあります。

  • 起き上がると強くなる頭痛
  • めまい
  • 悪心・嘔吐
  • 倦怠感
  • 頸部痛
  • 耳鳴り

特に、横になっていると軽くなり、座ったり立ったりすると強くなる頭痛は、髄液漏に伴う低髄液圧を疑う手がかりになります。

ただし、症状の現れ方には個人差があり、必ずしもすべての症状が出現するわけではありません。

看護師が注意したい観察ポイント

ドレーンの排液状態

  • 排液量
  • 排液の性状や色調
  • チューブの屈曲や閉塞の有無
  • 吸引圧が指示どおりに設定されているか
  • 創部やガーゼへの漏出の有無

髄液漏が疑われる場合は、排液量が多いことだけでなく、排液の性状や患者さんの症状も確認します。

髄液漏が疑われる患者さんでは、ドレーンの吸引圧や管理方法が重要になります。陰圧によって髄液の排出が増えたり、低髄液圧に伴う症状が生じたりする可能性があるため、吸引圧を自己判断で変更せず、医師の指示や施設の手順を確認することが大切です。

体位と症状の変化

髄液漏が疑われる場合は、頭痛やめまいなどの症状と体位との関係を確認します。

また、術後の離床やギャッジアップの可否については、硬膜損傷の有無や修復状況、医師の指示を確認します。

硬膜損傷があった場合でも、安静度や離床の方針は患者さんの状態や治療方法によって異なるため、一律に判断しないことが重要です。

髄膜刺激症状

髄液漏に関連して髄膜炎などを発症することもあるため、次のような症状にも注意します。

  • 発熱
  • 頭痛
  • 悪心・嘔吐
  • 頸部硬直
  • 意識状態の変化

これらの症状がみられた場合は、髄膜炎などの合併症も考慮し、速やかに医師へ報告します。

髄液漏が疑われる場合の対応

髄液漏が疑われる場合は、排液の状態や頭痛などの症状、体位との関係を確認し、速やかに医師へ報告します。

患者さんの状態や硬膜の修復状況に応じて、体位や活動範囲の調整、追加の検査、硬膜の修復などが検討されます。

看護師は、ドレーンの管理方法や安静度について指示を確認し、症状の変化を継続して観察することが大切です。

まとめ

脊椎手術後には、硬膜外血腫、創部感染症、硬膜損傷による髄液漏などの合併症に注意が必要です。

今回のポイントを振り返ります。

硬膜外血腫

  • 疼痛の増強や新たな神経症状に注意する
  • 術前からの神経症状を把握し、術後と比較する
  • ドレーン排液量の急な変化や創部の腫脹を確認する
  • 神経症状が進行している場合は迅速な対応が必要

創部感染症

  • 発熱や炎症反応の推移を確認する
  • 創部の発赤、腫脹、熱感、疼痛、浸出液などを観察する
  • インプラント使用例では、感染が難治化する可能性にも注意する
  • 疑わしい症状があれば速やかに報告する

硬膜損傷・髄液漏

  • 排液量や性状、創部からの漏出を確認する
  • 頭痛やめまいなどの症状と体位との関係を観察する
  • ドレーンの吸引圧や安静度について指示を確認する
  • 発熱や頸部硬直など、髄膜炎を疑う症状にも注意する

術後の患者さんを観察する際は、ひとつの症状だけで判断せず、術前からの状態や手術内容、ドレーン排液、創部、全身状態などを総合的に確認することが大切です。

この記事についての注意事項

本記事は、筆者が看護師として勤務していた際の経験や学習内容をもとに、看護師・看護学生の学習の参考となるよう作成しています。

医療に関する情報は、医学の進歩や新しい研究、ガイドラインの改訂などによって変更される場合があります。

実際の看護業務では、最新の資料や施設の手順、医師の指示などを確認してください。

また、本記事は個別の診断や治療を目的としたものではありません。