📖 はるの看護おべんきょう帖
看護師として整形外科病棟で働いていると、変形性股関節症の患者さんを受け持つ機会があります。
新人看護師の頃は、
「変形性股関節症って、どんな病気?」
「人工股関節置換術(THA)って何をする手術?」
「術後は何を観察すればいい?」
など、疾患や手術について勉強することも多いのではないでしょうか。
私自身も整形外科病棟で勤務し、人工股関節置換術を受ける患者さんの看護に携わってきました。
この記事では、変形性股関節症の症状・原因・進行・検査・治療についてまとめたうえで、人工股関節置換術(THA)後の看護や、注意したい合併症について解説します。
看護師・看護学生の方が、変形性股関節症について復習するときの参考になればと思います。
変形性股関節症とは?
変形性股関節症は、股関節の軟骨がすり減るなどの変化によって、股関節の痛みや可動域制限などが生じる疾患です。
股関節は、骨盤側にある「臼蓋(きゅうがい)」と、大腿骨の先端にある「大腿骨頭」によって構成されています。
関節軟骨には、骨同士が直接ぶつからないようにするクッションのような役割があります。
軟骨の変性や摩耗が進むと、関節の動きが悪くなったり、痛みが生じたりするようになります。
進行すると、歩行や日常生活にも影響することがあります。
変形性股関節症の原因
変形性股関節症には、さまざまな原因があります。
日本では、特に発育性股関節形成不全や臼蓋形成不全など、子どもの頃の股関節の発育に関係するものが原因となるケースが多いとされています。
そのほか、外傷や股関節への負担などが関係する場合もあります。
原因が一つではなく、複数の要因が関係して発症することもあります。
変形性股関節症の主な症状
変形性股関節症では、主に以下のような症状がみられます。
- 股関節周辺の痛み
- 鼠径部(脚の付け根)の痛み
- 股関節の可動域制限
- 歩行時の痛み
- 長時間歩くことが難しくなる
- 日常生活動作が行いにくくなる
股関節や鼠径部の痛み
初期には、歩き始めや立ち上がりなど、股関節に負担がかかる動作で痛みを感じることがあります。
進行すると、歩行時だけでなく、安静時や夜間にも痛みが出る場合があります。
股関節の可動域が狭くなる
病気が進行すると、股関節が動かしにくくなることがあります。
例えば、
- 靴下を履く
- 足の爪を切る
- 足を組む
- 階段を上り下りする
- 和式トイレを使用する
などの動作が難しくなる場合があります。
看護師としては、単に「股関節が痛い」という訴えだけではなく、患者さんの日常生活にどのような影響が出ているのかを確認することも大切です。
変形性股関節症の進行
変形性股関節症が進行すると、X線検査で関節の変化がみられるようになります。
初期には関節の隙間が狭くなったり、軟骨の下の骨が硬くなったりします。
さらに進行すると、骨棘(こつきょく)と呼ばれる骨の突出や骨嚢胞などがみられることがあります。
進行した状態では、関節軟骨が大きく失われ、骨同士が接するようになることもあります。
症状も徐々に強くなり、歩行や日常生活に支障が出ることがあります。
変形性股関節症の検査・診断
変形性股関節症では、患者さんの症状や身体所見に加えて、画像検査などを行って診断します。
X線検査
X線検査では、
- 関節裂隙の狭小化
- 骨硬化
- 骨棘
- 骨の変形
などを確認します。
変形性股関節症の評価では、基本的な画像検査の一つです。
CT・MRI
必要に応じてCTやMRIなどの画像検査が行われることもあります。
検査の目的は患者さんの状態によって異なるため、どの検査が行われているのか、その目的を理解しておくと患者さんへの説明や観察にもつながります。
変形性股関節症の治療
変形性股関節症の治療には、大きく分けて保存療法と手術療法があります。
保存療法
保存療法では、症状の軽減や日常生活の負担を減らすことを目的として、
- 運動療法
- 体重管理
- 歩行補助具の使用
- 薬物療法
- 日常生活の工夫
などが行われます。
運動療法では、痛みの程度や身体の状態を考慮しながら、無理のない範囲で行うことが重要です。
手術療法
保存療法を行っても症状が改善しない場合や、関節の変形が進行している場合などには、手術療法が検討されます。
手術方法には、関節を温存するための骨切り術や、人工股関節置換術などがあります。
患者さんの年齢、症状、関節の状態などを考慮して治療方法が選択されます。
人工股関節置換術(THA)とは?
人工股関節置換術は、傷んだ股関節を人工関節に置き換える手術です。
英語では Total Hip Arthroplasty(THA) と呼ばれます。
私が整形外科病棟で勤務していたときにも、人工股関節置換術を受ける患者さんを受け持つ機会がありました。
人工股関節は、大きく分けると、
- 大腿骨側に入れる人工骨頭
- 骨盤側に入れるカップ
などから構成されています。
人工関節の固定方法や使用する部品などは、患者さんの状態や手術方法によって異なります。
THA術後の看護で確認したいこと
人工股関節置換術後は、手術後の全身状態だけでなく、股関節の状態や離床・歩行の状況を確認することも重要です。
例えば、
- バイタルサイン
- 疼痛の程度
- 創部の状態
- 出血の有無
- 下肢の腫脹
- 下肢の感覚や運動
- 末梢循環
- 離床・歩行状況
- ADLの変化
- 脱臼の兆候
- 血栓症を疑う症状
などを患者さんの状態に合わせて観察します。
実際の観察項目や頻度については、手術方法や患者さんの状態、医療機関の手順によって異なります。
THA術後に注意したい合併症
人工股関節置換術後には、さまざまな合併症に注意が必要です。
代表的なものとして、
- 脱臼
- 感染
- 深部静脈血栓症(DVT)
- 肺血栓塞栓症
- 人工関節のゆるみ
などがあります。
その中でも、整形外科病棟で勤務していた私が特に注意していたものの一つが人工股関節の脱臼です。
人工股関節置換術後の脱臼
人工股関節置換術後には、人工関節が脱臼する可能性があります。
脱臼すると、突然の強い痛みや股関節の動かしにくさ、歩行困難などがみられることがあります。
患者さんから、
「急に股関節が痛くなった」
「脚を動かせなくなった」
などの訴えがあった場合には、術後の経過や状況を確認し、必要に応じて速やかに医師へ報告します。
前方脱臼と後方脱臼
人工股関節の脱臼には、前方脱臼と後方脱臼があります。
脱臼する方向によって、股関節や下肢の肢位に特徴がみられることがあります。
一般的に、後方脱臼では股関節の屈曲・内転・内旋が組み合わさる肢位が脱臼につながることがあります。
一方、前方脱臼では股関節の伸展・外旋などが関係する場合があります。
ただし、術後に注意すべき肢位は、手術アプローチや患者さんの状態によって異なります。
そのため、「THA後は全員この肢位を禁止する」と一律に考えるのではなく、手術方法や医師・理学療法士などからの指示を確認することが重要です。
脱臼を疑うときの観察
術後の患者さんに、
- 突然の強い股関節痛
- 股関節を動かしにくい
- 歩行できなくなった
- 下肢の位置や向きに変化がある
- 脚長差がみられる
などの変化があれば、脱臼の可能性も考えます。
ただし、これらの症状だけで脱臼と判断することはできません。
異常を認めた場合には、患者さんの状態を確認し、必要に応じて医師へ報告して画像検査などにつなげます。
THA術後の脱臼予防で大切なこと
脱臼予防では、患者さんが手術後にどのような姿勢や動作に注意する必要があるのかを理解できるよう支援することが大切です。
ただし、注意する動作は手術アプローチによって異なるため、患者さんごとの指示を確認します。
また、ベッド上での動作だけでなく、
- 起き上がり
- 立ち上がり
- ベッドから車椅子への移乗
- トイレ動作
- 更衣
- 歩行
など、日常生活のさまざまな場面で確認する必要があります。
看護師としては、患者さんが「分かっているつもり」になっていないか、実際の動作では安全に行えているかを確認することも重要です。
THA術後の看護で大切だと感じたこと
私が整形外科病棟で働いていたときは、手術後の状態を観察するだけではなく、患者さんが少しずつ日常生活に戻っていく過程を見る機会が多くありました。
術後は、ベッド上での動作から離床、歩行、トイレへの移動など、少しずつできることが増えていきます。
その一方で、
「動いて大丈夫なのかな?」
「退院してからどう生活したらいいんだろう?」
と不安を感じる患者さんもいます。
そのため看護師としては、患者さんの痛みや身体の状態を確認しながら、安全に離床・移動できるよう援助することが大切だと感じていました。
また、患者さんが退院後の生活をイメージできるよう、リハビリテーションや退院指導につなげていくことも重要です。
新人看護師が変形性股関節症の患者さんを受け持つときのポイント
新人看護師の場合、疾患名だけを覚えるのではなく、
「この患者さんには、今どんなことが起こりやすいのか?」
という視点で考えると、観察項目を整理しやすくなります。
例えばTHA術後であれば、
① 手術後の全身状態
バイタルサインや疼痛、創部、出血などを確認します。
② 下肢の状態
腫脹や疼痛、感覚・運動、末梢循環などを確認します。
③ 血栓症のリスク
手術後や離床が進む時期には、血栓症についても意識して観察します。
④ 脱臼のリスク
手術方法や患者さんへの指示を確認し、移動や日常生活動作の中で適切な姿勢がとれているかを確認します。
⑤ 退院後の生活
歩行やトイレ動作、更衣など、退院後の生活に必要な動作がどこまでできているかも大切です。
疾患・手術・患者さんの生活をそれぞれ別々に考えるのではなく、**「この患者さんが退院後に安全に生活するためには何が必要か」**という視点を持つと、看護につなげやすくなります。
まとめ
変形性股関節症は、股関節の軟骨の変性や摩耗などによって、痛みや可動域制限などが生じる疾患です。
進行すると歩行や日常生活にも影響することがあります。
治療には保存療法と手術療法があり、症状や関節の状態などに応じて治療方法が選択されます。
人工股関節置換術(THA)を受けた患者さんでは、術後の全身状態だけでなく、疼痛、創部、下肢の状態、離床・歩行状況、脱臼や血栓症などの合併症にも注意が必要です。
また、脱臼には前方脱臼と後方脱臼があり、手術アプローチなどによって注意すべき肢位が異なります。
新人看護師の場合は、疾患や観察項目をただ暗記するだけではなく、
「なぜこの観察が必要なのか」
を疾患や手術と結びつけて考えることが、看護を理解するうえで役立ちます。
私自身、整形外科病棟で勤務していた経験があるので、今後も実際の看護で学んだことや、昔の勉強ノートを振り返りながら、看護師・看護学生の方の学習に役立つ記事をまとめていきたいと思います。
医療・看護記事について
※本記事は、筆者が看護師として勤務していた際の経験や、公開されている医学・医療情報などをもとに、看護師・看護学生の学習の参考となるよう作成しています。
医療・看護に関する情報は、医学の進歩や新しい研究、ガイドラインの改訂などによって変更される場合があります。また、同じ疾患や検査結果であっても、患者さんの年齢、既往歴、症状、治療内容、全身状態などによって必要な対応は異なります。
そのため、本記事の内容は、診断・治療・薬剤の使用・看護ケアなどについて個別の判断や指示を行うものではありません。本記事の内容だけをもとに、実際の患者さんへの対応や看護上の判断を行うことは避けてください。
実際の看護を行う際には、所属する医療機関・施設の看護手順やマニュアル、医師・看護師・薬剤師などの医療従事者からの指示、使用する薬剤や医療機器の添付文書、最新のガイドラインや公的機関・学会などの情報を確認してください。
本記事の内容と、勤務先の手順や最新の医療情報が異なる場合は、勤務先の手順や最新の情報を優先してください。
なお、本記事では一般的な知識を扱っているため、読者の方が置かれている状況に応じた個別の医療上の判断や対応についてお答えするものではありません。体調や症状、検査結果などについて不安や疑問がある場合は、自己判断せず、医師や看護師、薬剤師などの医療従事者にご相談ください。
